地域NO.1になるために! 薬剤師は考えた、薬局・薬剤師はこのままでいいの?

街の薬局薬剤師として、地域医療の新たな課題を探ろうと思いをめぐらしていたひとみ。ある日、娘の美優の話をきっかけに、一歩前に踏み出そうとする。

地域に根ざす薬剤師だからこそできることが、きっとあるはず!

ひとみは、学期末の親子面談の帰り道、美優のおしゃべりに耳を傾けていた。「クラスの舞ちゃんのおばあちゃんが認知症で、お薬を飲んでくれないからママが困ってるんだって」「そっかー。舞ちゃんのママも大変だね」

ひとみが日頃接する人たちは、自分で薬局に来てくれるお客様ばかりだ。でも、薬局に来られない人もいる。在宅で療養や介護を受けている人たちやその家族には、舞ちゃんのママのように悩みがあるに違いない。「街の薬局に立つ、私のような薬剤師の役割は、もしかしてこの辺りにもあるのかしら」ひとみはヒントを得たような気がした。

そこで翌日、杖をつきながらやってきた山田さんの処方薬を、店内で購入したトイレットペーパーと一緒に届けることにした。山田さんの家を訪れてみると、玄関から見通せる奥の間に、寝たきりになっているというご主人が見えた。そこで初めて2人暮らしであることも知ったのだが、玄関先で話をしているうちに、山田さんが最近の悩みを口にした。「ちゃんと食べているのに、食べてないって言い張るから困ってしまって・・・」認知症が始まりかけているようだが、まだ薬は処方されていないという。

薬局への帰り道、ひとみは考え込んでいた。「山田さん、自分も足が悪いのに・・・2人暮らしで大変そうだな」昨日の美優の話も思い出した。「舞ちゃんのおばあちゃん、薬の用法は守られているのかしら? 服薬を確認できる介護者はいるのかしら?」ひとみの頭に次々と心配事が浮かんでくる。「そうだ! 私達のような薬剤師なら、舞ちゃんのおばあちゃんの服薬支援ができるわ」「山田さんにだって、医療機関の紹介をして、早期受診のお手伝いができるんじゃないかしら」

ひとみは、はっと気付いた。「これから、地域に根ざす薬剤師に求められる役割って、こういうことかもしれない」ご家族の悩みを聴いたり、生活のアドバイスをしたり、介護支援者を紹介することだってできる。日ごろ顔を合わせている私たちだからこそできることがたくさんあるはずだ。これは、地域に根ざす薬局の強みだ。「まず、何から始めるべきかしら? そうだ! 地域の中で個と個がつながるような絆づくりよ! 何でも話せる、相談できる身近な薬局よ!」大きなきっかけを得たひとみは、新たな思いを抱え、薬局への帰り道を駆け出した。

【今回のポイント!】

超高齢社会に入った日本の人口構成の変化は、医療の必要な人達を病院だけではカバーできず、在宅医療提供体制の構築の重要性が叫ばれ、地域薬剤師と地域との絆が求められています。
したがってこれからの地域医療を担う薬剤師は、病状の回復を目指すことも大切ではありますが、横断的、包括的に、QOL(Quality of Life/生活の質)重視の医療提供もまた求められています。絆の中心となるべき薬剤師は、自らの体験、知識に固執せずに柔軟な発想と、気付きの視点をもって、的確な対処処置が大切になってくるといえるでしょう。

 

掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。掲載日:2012年04月04日