地域NO.1になるために! 薬剤師は考えた、薬局・薬剤師はこのままでいいの?

ひとみからのヒントで、元気のなかった後輩薬剤師もまたイキイキと働き出した。
そんなある日、ひとみはまた新たな課題に出会うことになった。

薬局の店頭から毎日見ている地域の生活。これからの薬剤師に求められる、その先にあるもの。

ひとみは、久しぶりに元同僚の薬剤師みどりに会った。すると、2人が勤務していたチェーンは、今や大手グループの傘下になったという。そこでは「これからの薬剤師にはマネジメント意識とスキルが必要」という理念のもと、常にビジネス発想が求められ、みどりもだいぶ鍛えられたようだ。

以前のみどりの関心ごとは、ランチやオシャレのことばかりだったが、今では確実に知識を身に付け、キャリアも積んで眩しく見えた。大手でさえ危機感を持っているのだから、私が勤めている規模の小さな薬局は黙っていれば自然淘汰されてしまう・・・。ひとみに急激に焦る気持ちが生まれてきた。

「ね、ウチみたいな小さな薬局でも生き残れるヒントって、何かないかしら?」
「それはひとみにしか、わからないわよ。ひとみの薬局がどんな強みや弱みを持っていて、どんなチャンスがあって、怖いことは何かを考えてみるのがいいんじゃない」とみどりはヒントをくれた。確かにそうだ、この薬局に関しては私が一番よく知っている。

その日の夕食後、ひとみがテーブルでヒントに従って表を作っていると、夫の純がのぞきこんできた。
「お、これは『SWOT分析』だね。」
「えっ、すおっと、ぶんせき?」
「今、ひとみのやっていることは、実は基本的なマーケティング手法でね、実際に僕たちもよく使うよ。ひとみのお店の強み(S:Strength)、弱み(W:Weakness)、機会(O:Opportunity)、脅威(T:Threat)の4つを整理して書き出してみな。」純はソファーに寝転がると、テレビの続きを見始めた。
「これが、マーケティング分析なのか。ヨシ。」軽く気合を入れると、ひとみは表作りを再開した。

「S:強み」は、お客様一人ひとりの顔が見えること、商品の仕入れを自由に決められること・・・etc、「W:弱み」は、客層が固定的だということ、商品ラインアップは量販店にかなわないこと・・・etc。各々について客観的に考えてみてハタと気付いた。これまで「店の中」という小さな世界でお客様とどう関わるべきかを試行錯誤して、それなりの効果はあった。だけど社会や環境の変化の中での店の位置づけまでは考えたこともなかった。もちろん地域医療については漠然と意識していたけれど、自分にはその前にやることがあると思っていた。でも、自分ももっと広い視野で、もっと先を見る必要があるのではないだろうか・・・。
在宅医療をはじめ、店の中にいるだけでは見えてこない地域医療のニーズに、街の薬剤師がどう関わっていけばよいのか。これは自分のためにも、地域で生活する人々のためにも向き合っていくべき課題だ。ひとみは自分の前に新しい道を見つけた思いだった。
(つづく)

【今回のポイント!】

SWOT分析

SWOT(スウォット)とは、自社の「強み」「弱み」「(事業)機会」「脅威」の4つの要因を整理し、自社の置かれている現状をシンプルに分析し、戦略に結びつけるための最も有名なフレームワークである。
SWOTは、ハーバードビジネススクールのケネス・アンドリューズ(Kenneth Andrews)らの著書「Business Policy: Text and Cases」(1965)やスタンフォード研究所のアルバート・ハンフリー(Albert Humphrey)らの「企業の長期計画がなぜ失敗したのかを明らかにする研究」から始まったと言われている。

掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。掲載日:2012年03月07日