生活習慣病(メタボ、糖尿病など)1


筆者紹介  加藤哲太

東京薬科大学 薬学部 教授
薬学教育推進センター

所属委員会等
・日本学校保健会・医薬品の使い方に関する指導方法検討委員会・委員
・セルフメディケーション推進協議会 理事
・東京都薬剤師会 学校保健委員会 委員

岐阜県生まれ。岐阜薬科大学卒業 薬学博士。薬の正しい使い方やたばこの害、薬物乱用防止、アンチドーピングに関する講義、体験実習などを通じて、青少年の薬教育の拡大を目指す。
主著:『新・体と健康シリーズ 知っておきたい「くすりの正しい使い方」自分の健康は自分で守ろう』『知の森絵本「なるほど!くすりの原料としくみ -基礎知識と正しい使い方-」』など
出演番組:日本テレビ「世界一受けたい授業」、NHK Eテレ「オトナへのトビラTV」など


※このコーナーは、受診勧奨すべき症状を判断できるスキルを磨くためのものです。診断行為にならないように注意するとともに、判断に迷ったら医師の診断を仰ぐようお伝えしましょう。

重篤な生活習慣病を防ぐためにも、その予備軍をケアすることが重要です。最近では、薬局などの店頭で比較的簡単に自分の体の状態をチェックできる「血液検査」サービスというものも普及しはじめ、手軽に詳細な健康チェックができるような環境が整いつつあります。こうしたサービスを利用すれば、糖尿病やその他の生活習慣病になる前に、生活を改善するよう指導することも可能です。このような「予備軍」を適切な生活習慣へと導いていくことも、今後は地域薬剤師の重要な役割になってくるでしょう。健康な方にとっても関心の高い生活習慣病ということで、これから数回にわたって見ていくことにします。

政府も推進する「かかりつけ薬剤師」の重要性

2013年の閣議決定「日本再興戦略-JAPAN is BACK-」では、地域薬剤師・薬局に関して、「薬局を地域に密着した健康情報の拠点として、一般用医薬品等の適正な使用に関する助言や健康に関する相談、情報提供を行う等、セルフメディケーションの推進のために薬局・薬剤師の活用を推進する」ということがうたわれています。これを受けて、厚生労働省では「健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会」で地域の薬局のあり方について検討が重ねられてきましたが、9月24日にその報告書がとりまとめられました。
そこには、かかりつけの基本的機能を備えた、健康相談などができる薬局の名称が「健康サポート薬局」に決まったことが記されています。さらに特筆すべきなのは、「健康サポート機能を有する薬局は、かかりつけ薬剤師・薬局の基本的機能を備える必要がある。すなわち、かかりつけ薬剤師のいる薬局でなければならない」と明記されていることです。これは、「かかりつけ」という言葉が店舗よりも薬剤師のほうに重心を置いているということを示すもので、つねづね私が言ってきた地域薬剤師のあり方と合致します。地域に密着し、生活者一人ひとりの健康を預かるためには、やはり専任の薬剤師が時間をかけてみていくほかないのではないでしょうか? これらをふまえると、生活者の健康管理でとくに重要になってくるのが、生活習慣病を防ぐための指導だといえます。そこで、以下で詳しく見ていくことにしましょう。

生活習慣病とは?

厚生労働省の定義では、生活習慣病とは、「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」のことをいい、以下のような疾患が含まれるとされています。

食習慣 インスリン非依存糖尿病、肥満、高脂血症(家族性のものを除く)、高尿酸血症、循環器病(先天性のものを除く)、大腸がん(家族性のものを除く)、歯周病等
運動習慣 インスリン非依存糖尿病、肥満、高脂血症(家族性のものを除く)、高血圧症等
喫煙 肺扁平上皮がん、循環器病(先天性のものを除く)、慢性気管支炎、肺気腫、歯周病等
飲酒 アルコール性肝疾患等

(生活習慣に着目した疾病対策の基本的方向性について(意見具申)より)

以前は「成人病」と呼ばれていましたが、成人になってからかかるものと思われていたこれらの病気が、実は子どもの頃からの生活習慣に大きくかかわっていることがわかったことから、「生活習慣病」と呼ばれるようになりました。なお、「成人病」は医学用語ではなく、昭和30年代に行政が提唱したもので、「加齢に着目した疾患群であり、生活習慣に着目した『生活習慣病』とは概念的には異なるもの」とのことです。ただし、どちらも年齢・生活習慣の積み重ねにより発症・進行する慢性疾患であるため、重複する疾病が多いといえます。

生活習慣病が怖いのは、文字どおり生活習慣と密接にかかわっているため、「このままでは良くない」と思っていても、なかなか改善できないこと、また急に悪化するわけではないため、進行に気づきにくいことなどがあげられます。肝疾患、がん、循環器病など、自覚症状に気づいたときには治療が難しい状態まで進んでしまう疾患が多いですから、日ごろから気をつけるように指導していきたいものです。

健康診断の検査値と意味を知ろう!

生活習慣病を防ぐために健康診断や血液検査での健康チェックは有効ですが、せっかく検査を受けてもそれを活かせなければ意味がありません。とくに、専門家として地域の生活者をサポートするなら、その結果を正しく判断して、生活者がわかるように説明できる資質を身につける必要があります。そこで、健康診断の検査値とその意味するところを確認しておきましょう。
以下に、主要な項目の参考基準値と検査項目・数値の意味をまとめておきましたので確認しておいてください。

健診項目 参考基準値 数値の意味
肥満度 腹囲 男性85cm未満 女性90cm未満 (内臓脂肪面積が100cm2に相当) 男性のほうが基準値は低いが、「リンゴ型肥満」とも呼ばれる上腹部肥満は内臓脂肪が中心で、男性に多いためと考えられる。メタボリック・シンドロームの危険性も高いとされる。
血圧 血圧 収縮期(最大)血圧 130mmHg 未満 拡張期(最低)血圧 85mmhg 未満 収縮期血圧は心臓が収縮したときの、拡張期血圧は心臓が拡張したときの血圧。
血液脂質 総コレステロール 140~199mg/dl 総コレステロールはホルモンや細胞膜の材料になるが、多過ぎると動脈硬化を起こす原因になる。
中性脂肪 150mg/dl未満 中性脂肪は糖分の取りすぎや運動不足で増え、悪玉のLDLコレステロールを増やし、動脈硬化を進めることにつながる。
HDLコレステロール 40~80mg/dl HDLコレステロールは血管にたまった悪玉のLDLコレステロールを肝臓に持ち帰るはたらきがあるため、善玉コレステロールと呼ばれる。
LDLコレステロール 120mg/dl未満 LDLコレステロールは血管の壁に蓄積して動脈硬化を起こし、脳梗塞や心臓病の原因になるため、悪玉コレステロールと呼ばれる。
肝機能 GOT(AST) 30U/l以下 肝細胞に多く含まれる酵素で、肝臓に障害が起こると血液中に流れ出し値が高くなる。とくに、「γ-GTP」はアルコール性肝障害で数値が高くなる。
GPT(ALT) 30U/l以下
γ-GTP(γ-GT) 50U/l以下
ALP 340U未満 肝臓内の胆管でつくられる酵素。胆汁中に排泄されるため、胆道のどこかに異常があると胆汁がうまく流れなくなり、血液中の数値が高くなる。この数値が高いと、胆汁の排泄障害の可能性が疑われる。
TP(血清総タンパク) 6.5~8.0g/dl 血清中に含まれるたんぱくの総称。肝臓や腎臓のはたらきに異常が生じると、血清中のたんぱくの代謝が乱れる。このたんぱくの総量を調べることで、肝臓や腎臓の状態を知ることができる。
総ビリルビン 0.3~1.2mg/dl ビリルビンは、寿命を終えた赤血球中のヘモグロビンが変化してできる黄色い色素で、通常は胆汁の成分として肝臓から十二指腸に送られ、排泄される。しかし、肝機能が低下したり、「胆道系の病気」があったりすると、ビリルビンが血液中に大量に流れ込んで「黄疸」が現れることがあるため、この数値が高い場合は急性肝炎などの病気が疑われる。
代謝系 空腹時血糖 110mg/dl未満 この数値が高いと、糖尿病が疑われる。食事の影響が大きいため空腹時に検査をする。
尿糖(半定量) (-) 尿中の糖の有無。血糖値が高いときに増えることがある。
尿酸 6.9mg/dl以下 尿酸はプリン体代謝の最終産物。腎臓で尿酸の排泄が追いつかなくなると血液中に残って増えていき、尿酸が結晶をつくると関節などにたまり炎症を起こす。高くなると痛風、尿路結石の原因になる。
血液 HbA1c (ヘモグロビンエーワンシー) HbA1c(NGSP)が6.5%未満 [HbA1c(JDS)が6.1%未満] HbA1c は、赤血球のヘモグロビンAと血液中のブドウ糖とが結合したもの。約120日間血液中に存在するため、1~2カ月間の血糖の状態を推測することができる。そのため、糖尿病の確定診断の指標となったり、病気の経過を観察するのに役立つ。
Ht(ヘマトクリット) 男:38.0~48.9% 女:34.0~43.9% ヘマトクリットは血液全体に占める赤血球の割合を表す。低値は貧血の疑いがある。
Hb(ヘモグロビン) 男:13.0~16.6g/dl 女:11.4~14.6g/dl ヘモグロビンは赤血球の中の物質で酸素を運ぶはたらきをしている。低値は鉄欠乏性貧血の疑いがある。
赤血球数 男:400~539 (×104/mm3) 女:360~489 (×104/mm3 赤血球は肺で取り入れた酸素を全身に運び、不要となった二酸化炭素を回収して肺に送る役目があるので、高値は多血症、低値は貧血が疑われる。
白血球数 33~89(×102/mm3 この数値の高値は感染症の疑いが、非常に高い値や低値は、血液の病気の疑いがある。
尿・腎機能 尿たんぱく(半定量) (-) 尿中のたんぱくの有無。腎炎・起立性たんぱく尿などで陽性の場合がある。
尿潜血 (-) 尿中に混じるごく微量の血液の有無。腎炎・尿道炎・尿路結石などで陽性になる。
血清クレアチニン 男:1.10mg/dl以下 女:0.80mg/dl以下 クレアチニンは腎臓でろ過されて尿に捨てられるが、腎臓の機能が低下していると血液中に残り、数値が高くなるため、高値は腎機能障害の疑いがある。

(参考:厚生労働省「標準的な健診・保健指導に関するプログラム(確定版)」、全国保険協会など)

地域薬剤師の指導・管理が大切!

ひとくちに生活習慣病といっても、このようにここでは書ききれないほど多くの情報が判断材料となります。しかし、一般の生活者にはなじみがないものや、難解なものが多く、生活者自身がそれらを理解して生活を改善するということまでには、なかなか至らないものでしょう。

そこで重要になるのが、地域薬剤師による健康指導・管理です。生活者の健康寿命延伸のために、今後薬剤師がなすべき課題となるでしょう。こうしたことをふまえ、次回以降は代表的な疾病をとりあげ、薬局・薬店での指導や健康管理について具体的に見ていくことにします。

掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。掲載日:2015年11月27日