鼻炎1(抗ヒスタミン・抗アレルギー作用)


筆者紹介  加藤哲太

東京薬科大学 薬学部 教授
薬学教育推進センター

所属委員会等
・日本学校保健会・医薬品の使い方に関する指導方法検討委員会・委員
・セルフメディケーション推進協議会 理事
・東京都薬剤師会 学校保健委員会 委員

岐阜県生まれ。岐阜薬科大学卒業 薬学博士。薬の正しい使い方やたばこの害、薬物乱用防止、アンチドーピングに関する講義、体験実習などを通じて、青少年の薬教育の拡大を目指す。
主著:『新・体と健康シリーズ 知っておきたい「くすりの正しい使い方」自分の健康は自分で守ろう』『知の森絵本「なるほど!くすりの原料としくみ -基礎知識と正しい使い方-」』など
出演番組:日本テレビ「世界一受けたい授業」、NHK Eテレ「オトナへのトビラTV」など


※このコーナーは、受診勧奨すべき症状を判断できるスキルを磨くためのものです。診断行為にならないように注意するとともに、判断に迷ったら医師の診断を仰ぐようお伝えしましょう。

配合成分の作用の違いは押さえておきたい

今回は、季節にあわせて鼻炎症状を取り上げます。どんな患者がきても対応できる地域薬剤師を目指すなら、鼻炎薬に配合される成分の種類と作用機序を、的確に説明できるようにしておくことが重要です。そのためには、添付文書に書いてある内容の意味を考え、理解したうえで対応しなければなりません。そこで今回は、抗ヒスタミン作用と抗アレルギー作用についてみていきます。これらのはたらきには、アレルギー症状が起こるもとを抑えるものと、症状を抑えるものとがありますので、それぞれの特徴や利点を再確認しておきましょう。
なお、抗ヒスタミン成分のはたらきは、以前とりあげた解熱鎮痛成分のはたらきとあわせて考えると総合感冒薬にも応用できます。このように成分のはたらきをきちんと理解しておくことで同様の成分を配合した商品についても理解が深まります。

アレルギー症状と抗ヒスタミン成分

花粉などの刺激を受けると、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエン、トロンボキサンなどが放出されます。なかでも、ヒスタミンはヒスタミンH1受容体に結びつくことでくしゃみや鼻水などのアレルギー症状を引き起こします。これらの症状は比較的すぐに起こるため、「即時相反応」と呼ばれます。このヒスタミンがH1受容体に結びつくことを防ぐはたらきをするのが、抗ヒスタミン成分です。抗ヒスタミン成分の作用は、このような「即時相反応」を抑えるのに有効なため、比較的効き目が早いのが特徴とされます。

なお、ヒスタミンは鼻粘膜ではくしゃみなどのアレルギー反応を引き起こしますが、脳内では脳の覚醒維持にはたらいています。このため、ヒスタミンをブロックする抗ヒスタミン成分が脳内に入ると、眠気などの副作用を引き起こすのです。
とくに、抗ヒスタミン成分のうち、第一世代と呼ばれるクロルフェニラミンマレイン酸塩などは、血液脳関門を通過して、中枢神経抑制作用(眠気、インペアード・パフォーマンスなど)を引き起こしやすいのが特徴です。また次回取りあげる予定ですが、抗コリン作用ももつため、鼻汁の抑制などに効果的な反面、口渇・尿閉・眼圧上昇などの副作用が現れやすくなり、医療用では緑内障に禁忌、OTCでは「相談すること」となっています。

一方、第二世代の抗ヒスタミン成分は中枢へ移行しにくく、第一世代の抗ヒスタミン成分と比べて、中枢神経抑制作用が軽減されているものが一般的です。また、一般に抗コリン作用も軽減されているといわれます。

●第一世代の抗ヒスタミン成分

・ジフェンヒドラミン塩酸塩
・(d-、dl-)クロルフェニラミンマレイン酸塩
 →d体のほうが眠気が少ないとされる。
・クレマスチンフマル酸塩 など

●第二世代の抗ヒスタミン成分

・メキタジン
・ケトチフェンフマル酸塩
・フェキソフェナジン塩酸塩
・エピナスチン塩酸塩
・セチリジン塩酸塩 など

注意したい副作用など
・眠気、インペアードパフォーマンス:抗ヒスタミン作用による中枢抑制
・口の渇き:抗コリン作用による腺分泌の抑制
・排尿障害:抗コリン作用による排尿筋の弛緩
・視覚障害:抗コリン作用による毛様体筋の弛緩(目のかすみ、異常なまぶしさ)
・緑内障の悪化:抗コリン作用による眼圧上昇

アレルギー症状とケミカルメディエーター遊離抑制成分

アレルギー反応を引き起こすヒスタミンやロイコトリエン、トロンボキサンなどの伝達物質を総称して、ケミカルメディエーターと呼びますが、このケミカルメディエーターを肥満細胞から放出させないというアプローチでも、アレルギー反応を抑えることができます。

この“ケミカルメディエーターの遊離を阻害する”のが「ケミカルメディエーター遊離抑制成分(抗アレルギー成分)」です。この作用は、「肥満細胞の細胞膜を安定化し、ケミカルメディエーターの放出を抑制する作用」を指し、それによってアレルギー性鼻炎の症状を抑えるというものです。とくに、アレルゲンとの接触後しばらくして起こる「遅発相反応」である鼻閉などでは、遅発相における、免疫細胞の過剰なはたらきを抑えることで、鼻閉の悪化を抑制することができます。
抗ヒスタミン成分が現在ある症状を抑えることを主体とするのと比べ、発症前から服用することで、症状の進展・悪化を抑え、シーズン中の症状を軽くできるのが特徴ですが、効果を発揮するのには時間がかかるため、症状軽減のためにも早めの服用が効果的です。

なお、抗ヒスタミン作用のないケミカルメディエーター遊離抑制薬は、一般に中枢での抗ヒスタミン作用もないとされます。第二世代の抗ヒスタミン成分の中には抗アレルギー作用をもつものがありますが、これらは眠気を起こすものが多いため、中枢抑制という点では区別しておいたほうがいいでしょう。

●ケミカルメディエーター遊離抑制薬

・クロモグリク酸ナトリウム
・ペミロラストカリウム など

注意したい点
・効果がピークに達するまでに1~2週間かかることがあるため、花粉飛散開始の1~2週間前を目安に服用を開始することが望ましい。

抗ヒスタミン成分、ケミカルメディエーター遊離抑制薬、それぞれメリットとデメリットがありますので、服用される方の職業や生活背景にあわせて適切な医薬品をおすすめしましょう。

掲載している情報は、取材時もしくは掲載時のものです。掲載日:2015年01月29日